富山「薬種商の館 金岡邸」を訪れたお話。
[訪問日:2023年6月]
富山県新庄町にある「薬種商の館 金岡邸」は、江戸時代から300年の歴史がある“富山の売薬文化”を現在に伝える資料館。薬の原料や製造道具、薬売りの装備や売薬版画、薬研を使った薬作り体験もできました。さらに邸宅は、明治初期の建築様式を残す国登録有形文化財! 売薬文化を支えた薬種商と薬売りの暮らしが垣間見える「金岡邸」を紹介します。
※スタッフの了承を得てから、写真を撮らせていただいています(どんどん撮って発信して!とのお言葉が有難い)
迫力の百味箪笥!展示品が貴重すぎる生薬・道具・包装
「薬種商の館 金岡邸」に一歩入ると、明治初期の薬種商店舗に迎えられ、壁一面を埋める百味箪笥(ひゃくみだんす)の迫力たるや…。百味箪笥は薬種を保管するための箪笥で、こちらは1860年の代物(そして百味箪笥の存在感の奥にある…金岡家の財力を感じずにはいられなかった)。
当時の薬の看板。書体や構図がおしゃれで、もはやアート。
生薬の展示品には、今では高価すぎたり入手困難だったりする品々もあり、麝香鹿の剥製も。スパイスとして身近な植物も多数。スパイスの定義では芳香性や刺激性を持ち食べることができる植物(の一部)とされますが、生薬になると薬効を持つ植物や動物や鉱物など自然界に存在する産物になるんですね。
製造道具を見る限り、当時の薬作りは体力と根気が必要そう(後ほど実感することに)。
私が興味を持ったスパイス×北前船の関係も紹介されていました(初めて知った時、壮大さに鳥肌が立ちました)。
売薬の包装もデザイン性が高い! この時代からサフランは婦人科系に良いとされていたことに驚き。
体力とコツがいる!薬研を使った薬作り体験
“富山の薬売り”は全国行脚して薬を売り、故郷に戻ると薬種商で生薬を仕入れ、独自ブレンドで処方した薬を作り、次の旅に備えます。「薬種商の館 金岡邸」では、その薬を作る「薬研体験」(別途200円)ができます。
原料は4つの生薬、丁子(クローブ)・橙皮(ダイダイの果皮)・薄荷(ミント)・茴香(フェンネル)。
まずは硬い生薬の丁子と橙皮を薬研で砕きます。ゴリゴリし始めるとふわ~とスパイシーな香りが!5分程ゴリゴリすると粗砕きに。
次に柔らかい生薬の薄荷と茴香を加え、再びゴリゴリ。腕の力ではなく体重を乗せるのがコツですが、上手くできずにヘトヘト。
さらに5分程ゴリゴリすると粉々になってきて、最後は紙に包んで完成!※薬研体験の生薬は香りを楽しむ目的のため食べられません
薬研で生薬を粉末化するのは思った以上に体力いるし、一回の旅に持っていく量を仕込むのは大変だったろうな。そして生薬・医薬の知識もあって全国を歩く体力もある…、薬売り凄い!
富山駅から「薬種商の館 金岡邸」へのアクセス
富山地方鉄道「電鉄富山」駅から「東新庄」駅へ。乗車時間は約25~30分。ICカードが使えないので切符を購入し、降車時に運転士に手渡しました。
「東新庄」駅からは徒歩5分程。住宅エリアを道なりに進むと到着します。電車の本数が少ないので、帰路の時刻表チェックを忘れずに!
とはいえ「薬種商の館 金岡邸」は、他観光地から離れているので「ついでに寄って行こう」が難しい場所。なのですが…貴重な資料展示だけでなくお屋敷も見応え十分!
江戸~明治時代の和風建築やなんとも心地よいお庭など、薬種商を営む豪商の暮らしを感じることができるので、訪れてみてください。
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